そういえばブラックだった前の会社の話

最近、テレビやインターネットでは「ブラック企業」や「ブラックバイト」などが話題になってます。

 

 

ブラックの定義

何をもって『ブラック』とするかは、人によって若干解釈が違うんでしょう。

最近では会社が体育会系、上司にきつく叱られた、残業が多い、ボーナスがナイまたは少ない、などとただ満たされないだけで『ブラック』という言葉が使われているようにも見受けられますが、ここまでいくとただの拡大解釈と言えます。

ブラックというのは、労務管理がずさん、または守らない企業。
つまり従業員に対して法律で定められた賃金や休日などの提供義務を果たさない、権利行使を認めない企業だと僕は考えます。

代表例
・残業代を支払わない、あるいは手当や制度で誤魔化す
・繁忙期以外でも有給休暇を認めない、あるいは難癖をつけられるため極めて取得しにくい状況
・長期間の逸脱した時間外勤務を放置、ケアしない

求人情報や面接ではそれらを包み隠し、ウソ800を並べるわけです。

 

 

ブラックの背景

ブラック企業と一口に言っても、ブラック化の背景というかパターンがあると思うんです。
簡単なパターンを挙げると、

①悪ブラック
単にモラルが低い。
「従業員は捨てゴマ」的な考えの経営者のもとだとまともな労務管理などなく、従業員の生活や人生などは知ったこっちゃない。人件費は無駄なコスト、倒れるまで働け。
もう育ちがブラック。

②未必ブラック
社会的に弱小零細。
取引先に強くいえなかったりポジションはいつも下請け以下のため、慢性的な資金不足。
明確なビジネスモデルを掲げきれず、掲げても実行する体力がない、人材がいない。

賃金を払わないつもりはないけど払えない、休ませたくても余裕がない。

③消耗ブラック
成果・効率主義で社内の風通しが悪い。
成果や効率を最重要視する為、損なうと出世にひびいたり激しい叱責を伴うため自らの身を削る。
周りに味方が一人もいないとさらに大変。

 

 

そういえばブラックだった前の会社


僕は現在フリーランスなので時間外や有給などはなく、クライアントとの契約に準じます。
労基法の保護下になく、働く働かないは自分の匙加減一つ。

しかしフリーランスになる前、約7年ほどは新大阪駅近くにあった零細企業でサラリーマンとして働いてました。

業種はオープン系システム開発。

当時は今よりブラック祭りが盛んじゃなかったからかあまり意識してませんでしたが、今思うとこの会社、立派なブラックでした。
上記の定義にバチリと当てはまります。

 

 

パターンでいうと②の未必ブラック

自分で選んで就職し7年ほど在籍した会社なのであまりキツイことは言いたくないですが、ビジネスモデルなどあってないようなもので、孫請ポジションならマシという考え、まさにブラックのプラットホームに立ってるような会社でした。

「会社的にリスクを負いたくない」
ショボいくせに将来から目を背け、何を提案しても「リスクがある」「そんなことしてる余裕ない」と、そこから話が進まない。組織としてチャレンジしたくないんです。

社員を他の会社に派遣常駐させ、人員単価の利鞘で会社を細々と維持する。増収益の道は「社員数を増やす」「個々の人月単価UP」のみです。
もはやシステム開発会社でも何でもない。エンジニアを送り出すただの派遣会社。

「給料上げてあげたいけど、最近は単価があがらないからな」が口癖でした。
何もせず単価アップ妄想、そういえば楽しそうに語ってました。今でもウンコしてる時に思い出します。

ブラックから連想する悪徳のイメージよりも、社会的弱者からなる「残念な会社」といったほうが良いかもしれません。

具体的に、いかに残念な会社だったか。
特に給与面が面白かったです。

 

 

適当過ぎる給与制度 その1

月次給与を構成する中に「役職手当」というのもありました。
これは管理職になると付く手当です。意図としてはわかりやすい手当です。

僕も入社五年目から役職手当が付くようになりました。つまり管理職ということです。

五年目で管理職
こんなショボく小さな会社の管理職ほど嘘っぱちはありません。

僕はこの会社で自分以外の者の管理など何もしてないし、後輩はいても部下と呼べる者など1人もいなかった。

いわゆる名ばかり管理職というやつですね。
時間外不支給を正当化する為の常套手段です。

この少し後になって、世間ではマクドナルドの名ばかり管理職(店長)が話題になりましたな。

 

適当過ぎる給与制度 その2

「年俸制」もやってましたよ。いや、形すら無くただ宣言しただけだったかな。面白いですね。

次年度の賃金交渉や賃金説明などは1度もなかったし、年俸制前後で賃金も手当の種類もなんら変動なし。

ただただ賞与を払いたくないだけということなんです。
そもそも賞与など無い会社でしたから、これも賞与を払わない理由を正当化したいだけの常套手段です。

20年以上続いてる会社にもかかわらず給与規定などなかったのも笑えます。

 

適当過ぎる給与制度 その3

基本給(基準内賃金)って大抵の会社であると思います。職務給や本給など名前は違うかもしれません。
この基本給が一切増加しませんでした。その代わり?に基準外賃金が毎年微増。

基準内賃金が増えないということは、一般的な給与算出では時間外や賞与の算出で従業員が不利になります。(後述しますが、残業代も賞与も存在しませんでしたけど・・・)

基準外賃金扱いの「職務手当」というのが年に一度増加する仕組みで、これは新人社員から古株社員までの全員に付きます。

この仕組みには疑問しかなく、一度説明を求めました。
すると「スキルアップのためにちゃんと業務してる人への手当、スキルが上がれば増やす予定。基本給?増えないけど?」とかよくわからない説明をしてもらった記憶があります。

バカにされてたんでしょうね。

 

 

残業代は払わないけど、増収分は搾取

もちろん、残業代などまともに払ってはくれませんでした。

何度か「未払いは問題です」と指摘しても、「残業代ほしさに作業をしない社員やスキルが低い奴が得をする。この業界は特にそうだ。だから払えない」とまるで小学生のような理屈で正当化してました。
たしかに、仕事をこなさない者に与えるとなると理不尽な部分はある。であれば残業の制度自体を廃止したらいいんです。

そういうところの筋を通さないと、有能な奴なんかこんな会社に来るわけがないでしょ。

ホンマにいい加減にしろと思っていたので、しつこく問題提起し、やっと支払うようになったと思いきや、耐えきれなかったのか数か月程には例の職務手当に充当する形で逃げられました。

残業代については、会社が制度や仕組みなどを作ってコントロールすべき問題なんですけどね。
残業代の支払いを抑えたいのであれば、残業時間が膨らまないよう会社や管理監督者がコントロールやフォローをするんです。

働いた分はちゃんと耳を揃えて払わないとダメ。
個人的な感情論や経験論などは別の場所でしましょう。

 

面白かったのが、名ばかり管理職になった時に「増収益分の支給割合はどうなりますか」と掛け合ってみたときです。

派遣常駐先とは月の上限と下限の時間も契約に入っており、上限時間を上回った分は時間精算し収益になるんです(もちろん下限を下回った部分は赤精算です)。

その上回った分はどのように支給してもらえるか、と聞いたんです。
すると返ってきた答えは「4割あげる」。

・・・はて?4割とはどこからきたのかな?
これも聞いてみました。

巷の美容師さんとか、相場がそうだから

もう面白いやら情けないやら。
これ以上相手しちゃダメなヤツらだ、と直感的に感じました。

サラリーマンですからね、ある程度の会社への還元は当然だと思うんです。またその割合について納得のいく正当な理由があれば、話は別です。

それが「美容師さんとかの相場」ときました。
少なくともウチらは美容師さんではないし、業種も全然違うよ。

こんな子供がいうような根拠や説明で誰が納得すると思ったのか。
割合云々よりもその説明で良し思った事が信じられない。残念です。

 

 

賞与制度も嘘っぱち

求人情報には確か「3.5か月分支給」とあったはずですが、入社した年に寸志10万円だけ支給され、「これが我社最後の賞与であり今年度は新入社員だけに配付する」と言われました。

しかし、数名の先輩社員に聞いてみると賞与など貰ったことないと。

賞与がない=ブラックとは思いませんよ。
新入社員であれば寸志でも貰えるだけマシです。

しかし明らかに騙している。これはダメ。
たぶん寸志だけでも支給することで支払い実績を作りあげ、100%嘘だと言われないようにしたかったんでしょう。「残念ながら今年から無くなったんだわ、ごめんな」という。

 

 

福利厚生

交通費だけですね。
さすがにこれはありました。

ただそれだけですけど。

 

 

ずさんな労務管理

なにぶんショボい、孫請専用のような弱小会社なので、有効な案件になどなかなかありつけません。選んでる余裕などないですから。

どこの現場(クライアント)でも安い金額でこき使われます。
入社2年目の頃に常駐を命じられたパッケージメーカーでは、残業100時間超がほぼ半年くらい続いたこともあるし、20連勤とかも何度かやったな。

木曜金曜と週が進むにつれ、何故か首が自然とさがり、地面を見ながら歩くようになります。精神的なものなのか、首を支える体力すらも消耗しきってたからなのかはわかりません。

このような状況でも、クライアント(常駐先)への是正の申し入れ、産業医の受診指示、個別面談、他案件への異動手配など会社としてのフォローやケアは一切なかったです。
そもそも状況を把握しようという姿勢すらなかったように思います。

しかも残業代も払われない。

給与云々よりも、ここが本当にしんどかった。
今考えたらよくやったな。

「酷な状況を長期間放置し、その見返りも無い」会社。
これがブラックを言い表す言葉じゃないですかね。

 

 

まとめにかえて


とにかく残念な会社でした。

もちろん離職率も高かったですよ。
僕が5年目くらいの頃からは後輩が一人も残ってなかった。確か全員で10人はいたはずだけど。
会社全体でも僕が入社した頃より5~6人は減ってました。増えずに減ってました。

僕が辞めてから3年程が経ったある日、得たいの知れない会社に吸収合併されてました。
これは必然。そう思います。

 

「数百万円の未払残業代の支払いを求めて訴訟」というニュースをたまに見ますが、僕も未払い残業代だったらかるく300万円はあったと思いますよ。もしかしたら400万円以上かもしれない。僕以上の人もいると思う。

今となっては時効だし、当時の勤怠も残してないし、 会社がすでに潰れてるからどうしようもないですが。

しかし、得るものもありました。
こういった満たされない経験をしたおかげで会社などの組織を頼るべきじゃないことを学んだし、理不尽な環境では自分の立場や立ち位置は自分で作ることの必要性と重要性、それに気付くことができたと思ってます。

フォローするつもりはないけど、この会社はブラック的なことがしたいわけじゃなかったとは思うんです。社長は庶民的で理性的な人間でした。

ただ会社として世の流れについていく実力がなかった。だぶん、ついていかないと、という感覚すらもなかった。

払わなければダメなのはわかってる、従業員のケアもしたい。でもそんな体力はどこにもない。どうすればいいんだ。
そう言いたいでしょう。

まぁそれはそれとして、
やるべき事をしてないのはただの言い訳。そのシワ寄せは従業員に向かうんです。
事情はどうあれ、結果的にブラックはブラックですから。

 

 

おわり。

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*